新国立劇場『テーバイ』開幕レポート到着 ひとつの王国が衰退していく、壮大な物語に
ちなみに、アンティゴネらの衣裳はより現代的な装いとなっており、オイディプスは車椅子に乗り、森を守る男たちは銃を携行している。オイディプスの元に、この地を含むアテナイの代表者・テセウス、祖国テーバイがオイディプスの2人の息子の諍いから戦火にあることを知らせる娘のイスメネ、さらにはオイディプスにテーバイ帰還を求めるクレオン、そして争いを続ける息子のひとりであるポリュネイケスなど次々と来訪者がやってくる。やがて、オイディプスはこの地で人生の終焉を迎えることになる…。
最終の第三幕『アンティゴネ』では再びテーバイが物語の舞台に。舞台上には、戦争の原因となったオイディプスの2人の息子、ポリュネイケスとエテオクレスの死体を入れた袋が置かれているが、エテオクレスが埋葬される一方で、ポリュネイケスの遺体は荒野に打ち棄てられ、市民がその死を悼むことも禁止される…。そして舞台は第一幕と同じ部屋――いまはクレオンが王となったテーバイ王国の執務室へと移り、法律に背いて兄の亡骸を弔ったアンティゴネが罪に問われる様子が描かれる。
執筆された時期も異なるソポクレスの3本の独立した戯曲をひとつにまとめ上げた本作だが、鑑賞して感じるのは物語の“強度”の高さ。