君島大空が合奏で『縫層』に宿した圧倒的な生命力 配信ライブ『層に電送』レポート
力強いビートが打ち鳴らされて突入したのは「傘の中の手」だ。『縫層』の冒頭展開そのままに並べられた2曲が、ますますディープで豊かな音楽の世界へと観る者をいざなっていくようだ。跳ね回るメロディに同調するかのように、君島は笑顔を浮かべて歌っている。
「こんばんは、君島大空、合奏形態でございます。イェイ!」。3曲を終えた君島が、そんな軽い感じで挨拶し、「どうですか?」とメンバーに声をかける。そんな君島の言葉に「楽しい」と応えたのは新井だ。じつは前々から決まっていたというリキッドルーム公演。
結果的に配信という形になってしまったが、それでもできてよかった、と君島は喜びを口にする。
MCのそんなカジュアルなノリとは裏腹に、セットリストは1曲ごとに君島大空の音楽に込められた想像力を徹底的に暴き立てていく。複雑怪奇な展開の中ノイズと変拍子の応酬が激しく燃え上がる「笑止」、一転して穏やかで涼やかな世界の深みへと入り込んでいくような「19℃」。美しくも哀しみを帯びたハーモニーがメランコリーとみずみずしさ、相反するような感触を描き出していく。「しゃべることがたくさんんあったような、何にもなかったような。見られている気がするような、しないような」。