くらし情報『成長し変貌していく一人の若者と、落ちていく義経と。歌舞伎座 四月大歌舞伎第二部観劇レポート』

2022年4月13日 12:00

成長し変貌していく一人の若者と、落ちていく義経と。歌舞伎座 四月大歌舞伎第二部観劇レポート

付き添ってきたのは政五郎だった。政五郎には丸総にかつて恩義があり、その政五郎に恩義のある佐吉。卯之吉の将来のためになると政五郎に説得され、泣く泣く別れを決意する。払暁、佐吉は隅田堤の満開の桜を眺めながら、八重や政五郎、辰五郎、そして卯之吉が見守る中、一人旅立って行く。

松本幸四郎が佐吉を勤めるのは2度目だ。初役の際には片岡仁左衛門から教わったという。一人の気のいい若者だった佐吉が、やくざの世界に身を賭したばかりに、人として否応なく変わっていく様が伝わってくる。ひょろっとした着の身着のままの力のない新米やくざから、月代も伸びてちょっと疲れた感じに。
そして親分の敵を討った後は羽振りもよくなり、どこから見ても立派な親分姿。拵えだけではなく、声や所作、目線に至るまで、成長し変貌していく様をち密に作り上げていることが伝わってくる。

幸四郎は仁左衛門が佐吉を勤める舞台で辰五郎も勤めたことがある。佐吉が卯之吉を育てるその苦労と心情を切々を訴えるくだりで、「役として陰で聞きながら毎日本当に泣いていた」と取材会で語っていた。筆者が観たその日にも、客席のあちこちからすすり泣きが聴こえてきたし、幕間では目を赤くした観客をそこかしこに見かけた。

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