原作者シーラッハが解説。映画『コリーニ事件』が描く葛藤とは?
「作家は真実味を帯びた内容を書かないといけませんから、私は自分の世界や自分の少年時代を小説で描きました」とシーラッハは振り返る。そこで小説で描かれるライネンはブルジョワの世界で育った男として描かれているが、映画では脚色が行われ移民の設定になった。「映画はもっとわかりやすく、違う描き方をしてよいのです。観客にダイレクトに伝わらないといけませんから。努力型のアウトサイダーであるキャラクターは、より共感を呼ぶ素晴らしい設定だと思います。(ライネンを演じた)エリアス・ムバレクには感激しましたよ。彼の存在は強烈でした。あんなにスクリーンでオーラを放つ人はめったにいません」
さらに本作で彼は自身の祖父がドイツ史の影を背負っていることにも向き合っている。
映画を観てもらいたいので詳細は語らないが、主人公のライネンは事件を追う中で、第二次世界大戦中にドイツで起こった出来事に向き合うことになる。「祖父の犯罪は誰もが知るところです。祖父は歴史上の人物ですから。何を書くにせよ、私はそのことを意識して書きます。そうじゃないと書けません」
時が流れても歴史の中で起こった出来事は現在の人々や司法にも影響を与えている。