『けむりの軍団』上演中の新感線・いのうえひでのりを直撃
モノクロ映像の一部分だけ色を使うのは、黒澤が多用したパートカラー。普段は歌もの、ネタものでしか使わないド派手な電飾も使っています。自分の中での決め事みたいなものを、“今回はいいかな”って取っ払ったことが多かったですね。今回はフレームを決めるというか、自分の中でひとつ枠組みを作っちゃった方がいいと思ったから。“これは作り物、エンタテインメントの中の話だ”っていう」
彼から出た“フレーム”という言葉を聞いて、いのうえが最近、360°回転する劇場(IHIステージアラウンド東京)で約1年半に渡り演出を手掛けていたことが思い出された。限られた枠の中で表現しようとしたのは、ある意味、開放的すぎた空間での長期体験の反動といえる?
「それは大きいですよ。転換が多いと盆を回すって発想になるけど、“今度は盆を回しやがって”って言われるのがイヤだから、意地でも使いたくねーなっていうのは正直ありましたね(笑)」
いのうえが大胆に試みる“映画っぽい”舞台空間の中で動き回り、キャラを息づかせるのは、看板の古田新太を筆頭に、ほぼ集結した劇団員たち。加えて、“ほとんど劇団員”の常連・池田成志が古田とバディ的な役どころなのも、これまでにない新鮮さと贅沢が味わえる。