2023年7月25日 12:00
完璧な舞台が初演から約70年を経て実現! 三代澤康司が観た『ウエスト・サイド・ストーリー』
僕が親しくさせていただいている佐渡裕さんもバーンスタインの弟子です。音楽の楽しさを、聴く側や演奏する側の視点で種をまき、後世に受け継がせた人なんですよね。ソンドハイムの歌詞も素晴らしいんですよ。特に『アメリカ』なんて、ものすごい派手で華やかなダンスとメロディで、皆ウキウキして楽しいシーンなのに、歌詞をよく聴くと、アメリカを批判し皮肉を交えています。
初演ではダンスと歌がまだまだ分業で、歌って踊れる人はブロードウェイでも少なかった。今はそんな役者たちの技量はものすごく進歩していて、今回のカンパニーは、歌やダンス、芝居が素晴らしくて人間技を超えています。バーンスタインやソンドハイム、ロビンスが目指した完璧な『WSS』が初演から70年近くたった今、実現できた気がしました。3人は天国で「これを俺たちは作りたかったんだぞ」と言っているんじゃないかと思いますね。
二極化が進む今だからこそ、強く訴えかけてくる
――好きなシーンはたくさんあると思いますが、今回はいかがでしたか?
1幕目の最後に『トゥナイト』をクィンテットとコーラスで歌うシーンで、シャークス団が、「今夜相手をやっつけるぞ」とすごい勢いで決闘の場所に行く。