さらなる変化と出会いを求めて。是枝裕和監督が語る新作『真実』
それに日本語だと主語を省略したりしますけど、日本語からフランス語に翻訳する際に主語を戻して、時制も統一して……すごく言葉の数が増えるんですよ。ただ、カトリーヌ・ドヌーヴはすごく早口で、他の女優よりも同じ秒数で多くの言葉をリズミカルに音楽的にしゃべることができる。だからこのリズムは生かそうと思って撮影していきました。
大変だったのは編集で、撮影中に“これがOKテイクだな”というのはほぼ間違えずにジャッジできたと思いますし、ドヌーヴとビノシュは演技の組み立て方も、どのテイクで演技のピークがくるかも違うのでその見極めは丁寧にやったつもりですけど、そのテイクを編集で切り取っていくと、これが本当にベストだったのか、カットが変わるのは本当にこのタイミングでいいのか……編集の段階で改めて全部ジャッジしなおすことになりました。日本語でも“この言葉の途中でカットが変わると気持ち悪い”ってことがあると思うんですけど、僕はフランスの文法がわからないから、監督助手と通訳の方に観てもらいながら修正していって……そこでも映画のリズムは変化したんだと思います」
そして何よりも大きな変化は撮影に名手エリック・ゴーティエを招いたことだ。