『碁盤斬り』白石和彌監督インタビュー。目指したのは「荒々しさよりも美しさ」
柳田格之進は古典落語で繰り返し語られる演目で、本作はこの物語をベースに加藤正人がオリジナルの脚本を手がけた。
主人公の浪人・柳田格之進(草彅剛)は冤罪事件に巻き込まれた結果、故郷の彦根藩を追われ、江戸の長屋で娘のお絹と貧しく暮らしている。ある日、彼は旧知の藩士から冤罪事件の真相を知らされ、復讐を決意。しかし、格之進は別のトラブルにも巻き込まれ、期限の迫る中、決死の復讐に旅立つ。
劇中には囲碁の場面が盛り込まれ、登場人物たちが盤を挟んで対話し、時に探り合い、時に緊迫した対立を繰り広げるが、そもそも囲碁の展開を映画で描くのは難しい。白石監督は「そこは苦しんだところですよね」と笑顔を見せる。
「僕も囲碁のルールについては、この企画が動き出してからアプリを入れて勉強し始めるレベルだったんです。囲碁は難しいんですよ。
将棋とかチェスだと、相手のコマをとって、相手を追い詰めていく過程がもう少しビジュアルでわかるんですけど、囲碁は陣取りゲームで、映像と食い合わせが良いわけではない。そこをどう表現するのか?」
突破口は棋士の取材中にあった。
「高尾紳路先生という著名な棋士の方に教えていただいたのですが、教えてもらっている時の先生の手だけじゃなく、顔を見ている時に『この局面ではこういう感じなんだ』と響くものがあったんです。