『碁盤斬り』白石和彌監督インタビュー。目指したのは「荒々しさよりも美しさ」
映画的な美しさについては美術の今村さんの力が大きいです。僕はデビュー作からずっと今村さんと仕事をしてきて、今村さんが現役のうちに京都で仕事がしたい、というのが目標のひとつだったんです。今年で今村さんは80歳なんですけど、やっとこの映画で実現しました。
時代劇は制約も多いですけど、過去の時代劇が積み上げてきた知恵とアイデアがいっぱいあるわけですよね。今村さんにはそこをお願いしたかったんです。
今だったらCGでやってしまうような背景も、ホリゾント(背景用の幕や壁)に背景を描いてもらったりしましたし、劇中に出てくる吉原の門の前の橋も、実際はあんなにも大きくはないと思うんですけど、京都に『緋牡丹博徒 お竜参上』の時の橋の図面があったので、あえてそのまま持ってきたり……日本映画の良い時代の力を感じられるような作品にしたいと思いました」
本作は真面目な映画でも、格式の高い映画でも、本格的な映画でもない。とにかく楽しく、最後の最後まで飽きる瞬間がなく、スクリーンに広がる映像が美しく、登場する俳優たちが粋で危うい白石和彌流の“娯楽時代劇”の傑作に仕上がった。
「この映画に限らずですけど『俺は娯楽映画をつくっているんだ!』といつも思っています。