奇想天外でエネルギッシュ! 舞台『劇走江戸鴉~チャリンコ傾奇組~』ゲネプロレポート。井上瑞稀、橋本涼コメントも到着
親衛隊長・雷鳴庄九郎(かみなりしょうくろう)を演じるのは、浜中文一。サイドを編み込んだリーゼントでふてぶてしく凄む姿はまさに、ならず者たちの頼れる兄貴分だ。屈強で強面、殺陣で見せる威圧感は圧倒的だが、時折見せるニヒルな笑みに、ちょっと仄暗い雰囲気も魅力だ。富本惣昭演じる特攻隊長・庵平兵衛(あんのへいべえ)は、病を患う線の細い青年。限られた生の中で懸命に輝こうとする姿が胸に響く。発明小僧の黒鉄仟右衛門(くろがねせんえもん)はチャリンコを生み出した職人気質なキャラクター、茶目っ気たっぷりに演じる押田岳の姿が印象的。皆それぞれの事情を抱え、道を外した若者たちだ。江戸時代にあるわけがないデコチャリの迫力と、風にたなびく鴉の族旗。
いかめしい空気の中、“ママチャリ”のベルの音をここぞとばかりに響かせるユーモアも忘れない。客席は一気に、ヤンキー漫画的要素が散りばめられた荒唐無稽な江戸の世界へと引き込まれていく。
そこに登場するのが、江戸の浄化作戦の任にあたる同心、山本亨演じる小田切直雪(おだぎりなおゆき)とその手下、井上瑞稀演じる布袋数右衛門(ほていかずえもん)。数右衛門は元武家の出で、しかも元ヤン、厳しい人生を生き抜いてきた強さ、悲しさが滲み出る。