iaku『あつい胸さわぎ』に横山拓也が込めたものとは
を担っている。初稿を読んだ上田の「エンタテインメント性はあるけれど、母娘関係が単調だ」という意見を受けて、座組内で話しあったのだという。結果、役者から挙がったある母娘の思春期のエピソードを盛り込むことにした。「娘が大人になっていくことをうまく受け入れられない親がいる。その要素を入れることで母娘関係が複雑になって、ドラマが重層的になったかなと思います」。
前作から、演出面でのチャレンジも行っている。「前回の『逢いにいくの、雨だけど』から、美術家に先に作品のイメージやキーワードを伝えて、舞台美術のデザインを作ってもらってから脚本を書き出すということをやっています。これまではワンシチュエーション、ひと連なりの時間をリアルタイムで描くことが多かったのですが、シーンも時間も移動するという作品をつくろうとしたとき、抽象的な舞台であればやれることが増えるんじゃないかなと思っていま試しているところです」。
常に現代の社会的な課題を織り込みながらも、「その周りでうごめく人間を描いている」横山の脚本は、これまでも多くの演出家によって繰り返し上演されている。「再演に耐えうるような作品作りには意識的に取り組んでいます。