2023年11月2日 16:00
1943年を生きた、アメリカの青年たちの青春コメディ『ビロクシー・ブルース』稽古場レポート
休憩時間などに和気あいあいとした雰囲気で過ごしていたことも印象的だ。
そのヘネシーも明るく、ユージンを気遣うなど人の好さを見せて、木戸の笑顔が光る。だがその分、ある出来事の当事者となった際の嘆きがあまりにも悲痛で強いインパクトを残した。
軍のつらいしごきやまずい食事に耐える日々が描かれるが、彼らのやりとりが多分にコミカルであることに救われる。そしてカーニーがユージンの兄貴分のようにも感じられるふたりの交流は、おそらく観客の心にも染みるだろう。そう思わせる松田の兄貴力と濱田の弟感が、とても好ましかった。カーニーとして披露する松田の歌声も、ジャジーな曲の魅力と相まってとても魅力的だ。
「作家になる」「生き残る」「初体験をする」という、3つの決心をしているユージン。
娼婦ロウィーナ(小島聖)との初体験やデイジー(岡本夏美)との初恋と淡い恋の物語もありつつ、彼は仲間たちとの衝突など訓練中に起こる事件も乗り越えて少し大人になる。濱田は物語の語り手として長台詞もこなしながら、そんなユージンの瑞々しさ、そして良い意味で物慣れない風情を表現している。彼の持ち味にはまっている青年像が、今後どれだけ濃いものになっていくか期待したい。