成河、亀田佳明が熱く語る! 新国立劇場が2024/2025シーズン開幕に放つマクドナーの傑作『ピローマン』
笑いに関してはすごくイギリス的な知性を感じますが、知性、イコール理性だったりする。これから恐ろしい世界に、見たくなくても連れていくよ、という時に、一つ、理性という武器を渡してくれる──それが笑いであり、そのかわり、目を背けずに見てねと。それでよく見てみると、よく知っている自分の姿、あるいは近親者の姿を見せられて、自分の中で「そうだよ、それそれ!」といったつぶやきがたくさん起こる。人に聞かせる必要のない、普段は声に出せないことでも自分の中でつぶやける場所が劇場ですから、理性さえもっていれば、ものすごく豊かな体験が得られる。それはマクドナーのサジェスチョンではないでしょうか。亀田あの振り幅──設定、状況とやり取りのギャップに、心を捕まれるのではないかなと思います。やりとりは軽妙なのに、書かれていることは相当に凄惨。人間そのものの中にある生々しいものを突きつけられる感じと、ちょっと馬鹿馬鹿しいところのアンバランス。
何かとても現実的な感じがしますし、ただの空想上のきれいな物語のようにではなく、生々しく入ってくるように思います。
マクドナーをいまいちど再発見する
“物語る者”の、ある種の傲慢さを描き、物語の存在意義を問うているともいえる本作。