【レポート】4人のキャストが紡ぎ出す上質なカルテット。ミュージカル『ラフヘスト~残されたもの』
微笑ましい恋人たちの会話に、胸を抉られるような悲しい別れ――人生の悲喜こもごもが愛情深いまなざしで紡がれていき、次第にキム・ヒャンアンという女性の美しい人生と信念が浮かび上がっていく。
若き日のまっすぐでピュアな恋を担当するのは、相葉と山口だ。相葉が演じるイ・サンは、2024年日本上演作だけでも本作に加え『SMOKE』『ファンレター』と3作のミュージカルで登場する人物(厳密には『ファンレター』では彼をモチーフにしたキャラクター)。早世した孤高の天才詩人として知られるが、本作では掴みどころのない男性として山口扮するトンリムをやきもきさせる可愛らしさも。ただやはり、破滅型の天才だという面も相葉はしっかり見せ、その寂しさや孤独を丁寧に演じている。山口はイ・サンのよき理解者になっていくトンリムを、若さゆえのパッションと、きちんと自分の目で物事を判断する聡明さの両面から作り上げ好印象。
相葉と山口の若者カップルに対し、大人カップルを演じるのがソニンと古屋。二人は、見ていて笑みがこぼれてしまうような可愛らしい出会いから、お互いへのリスペクトが伝わる穏やかな時間まで、様々な時間軸に飛ぶ中での愛情のグラデーションを繊細に表現した。