2023年4月3日 18:00
『パンドラの箱』のヒロイン ルル役、伝説の女優をシネマヴェーラ渋谷で特集「宿命の女 ルイズ・ブルックス」(4/8から) ──水先案内人・高崎俊夫が紹介
今回の特集では、本書で言及されているスターたちの主演作であるヴィクトル・シェーストレムの名作『風』(28) や『化石の森』(36) も合わせて上映される。
ルイズ・ブルックスの出演作品は七本上映されるが、どれも必見である。ドイツ表現主義の代表作としても知られる『パンドラの箱』と『淪落の女の日記』(29) については、映画史家ロッテ・H・アイスナーが名著『魔に憑りつかれたスクリーン』の中で次のように書いている。
「彼女は何の指示も必要とせず、ただスクリーンを横切ればその存在だけで芸術作品を生み出す、そんな女優だったのである。ルイズ・ブルックスは感情をほとんど表に出さず謎めいているにもかかわらず、この二本の映画の至るところに抗しがたく存在している」
『パンドラの箱』
たとえば奔放なフラッパーを演じた『百貨店』(26) や胡散臭い詐欺師役を得意とした喜劇人W・C・フィールズと共演した『チョビ髭大将』(26) ではルイズ・ブルックスのコメディエンヌとしての魅力が楽しめる。だが、やはり、二人の男を手玉に取るハワード・ホークスの『港々に女あり』(28) や、気まぐれな思いつきでミスコンの応募し、恋人を破滅へと追いやってしまう『ミス・ヨーロッパ』(30)