日本を代表する彫刻家の内なる源泉に迫る 『舟越 桂 私の中にある泉』松濤美術館で開催中
展示風景より
展示風景より
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しかし、そんな写実的な作風で知られた舟越の人物像は1990年代より「異形化」が始まる。通常の人体ではありえないほどの長い首や、ねじれた位置にある腕を持つ人物像が出現しはじめたのだ。
2階展示室では、この傾向がさらに強まる2000年代以降の作品を主に展示している。
奥 《戦争をみるスフィンクス》2006年 手前《海にとどく手》2016年
《言葉をつかむ手》2004年
身体という枠組みを自由に拡張して表現を行うようになった舟越は作品に施す着彩も自由になっていく。2003年には、《妻の肖像》以来、約20年ぶりに裸婦像《水に映る月蝕》を制作した。
《水に映る月食》2003年
そして、2004年より、舟越は半人半獣・両性具有のスフィンクスをモチーフにした「スフィンクス・シリーズ」を制作開始。《スフィンクスには何を問うか?》は、この展覧会が初の披露となる新作だ。
《スフィンクスには何を問うか?》2020年
ダイナミックに変遷する作品とともに、同展では舟越の思考のプロセスや、人となりを伺わせるものも展示している。彼がノートやボール紙の切れ端に書き留めた言葉やスケッチ、彫刻制作の際に出た木っ端を使って作った木の玩具などは、使う相手を思いやる気持ちにあふれたものだ。