新国立劇場「デカローグ」全十篇に出演中。亀田佳明が明かす、“ある余白の存在”への思い
それぞれの作品が別のお話ですし、意外とこんがらかることもなかったんですよね。役柄の職業は登場する回によっていろいろと変わるけれど、関わり方としてはひとつ通底しているものがありましたから。この役が人、物語をどう見つめていくかということに関しては、一貫したものがあると感じていたんです。
──「一貫したもの」について、どのように感じ、演じられてきたのでしょうか。
稽古前に感じていたこととは微妙に変わってくるところもあるのですが、人間に対して、物語に対して、時代背景に対しての距離感みたいなもの──俯瞰しながら、どこか価値基準というものをできるだけ持たないというか、フラットな存在にしていったほうがいいのではないか、というのが、いまの時点で強く思っていることです。
そうすることで、物語がより立体的に見えてくるようなところもあるのかなと思います。すごく明確に、具体的に書かれた部分がありながら、終わった後にどこか余白を残す部分もあって、お客さまが「この後どうなるのかな」「ふたりの関係はどうなっていくのかな」と想像していくこと、また作品がどう昇華していくのかということもひっくるめて、その手助けとなるのが、僕の演じる「男」