新国立劇場「デカローグ」全十篇に出演中。亀田佳明が明かす、“ある余白の存在”への思い
具体的にどんな違いを感じられていますか。
小川さんは、物語や人を見つめ、俯瞰しつつ寄り添っていく、キェシロフスキ監督が本来描いていたように「男」を存在させている。一方の上村さんは、演劇ならではの存在感で、物語に入りこんでいく。「男」がみんなの中にズボッと入る瞬間があって、実験的な要素としてこの存在を捉えているという印象があります。物語に「入れてみちゃえ!」と(笑)。
『デカローグ2「ある選択に関する物語」』より、左から)益岡徹、亀田佳明(撮影:宮川舞子)
たとえば『デカローグ2「ある選択に関する物語」』。益岡徹さんが演じられた医長が過去の家族のことについて語る場面があります。映画では、医長の話を聞いた女性がケタケタケタって笑う印象的なシーンですが、今回はその受け手を僕が演じているんです。
今回の「デカローグ」日本版を演劇としてやっていく上で、上村さんは演出者として敢えてやっている部分があるんでしょうね。
人間への深い愛を、より強く感じさせる“最終章”へ
──これまで全く台詞がない役を演じてこられたわけですが、それはご自身にとってどのような体験でしたか。
台詞があってもなくても、演じる上での役への向き合い方や熱量に変わりはないんです。