森山直太朗、一〇〇本ツアーを振り返る独占インタビュー “この長いツアーで僕はようやく成人式を迎えられたんです”
もしかしたらそこが一番のチャレンジだったのかもしれませんね。
トラウマでもコンプレックスでも、そうしたものを手放せたときに、ようやく人生って始まるような気がするんですよね
――そもそもなんですけど、どうして「一〇〇本」だったんですか?
単純に、ずっとやってみたかったんですよね。ぼんやりと僕に見えている景色があったんです。その原風景は、子供の頃まで遡るんですけど。母や母と同世代のフォークシンガーの方達は年間100本、120本は当たり前というなかで音楽をやっていたんです。それを僕は子供の頃から目の当たりにしているから。ただ、彼らがやっていたのは、いわゆるリサイタルなんですよね。身ひとつか、そこに少数のメンバーを加えて成り立つもの。
でも僕のやってきたこと――今まで御徒町(凧)と作ってきた舞台は、わりと演劇的な要素が強かったんですよね。みっちり稽古して、ロングランでやったとしても2カ月という刹那的なものをやってきましたから、それを100本やるっていうのは思想として合わなかったんです。でも僕のなかには、先ほど言ったライブツアーっていうものの原風景があったんですよね。母が離島なんかでライブをすると、軽トラックに母の写真を模写した、よほど上手とはいえない絵が描かれた看板を積んで、町中を回ってるんですよ。