ミステリーの醍醐味が詰まったノサカラボ『ゼロ時間へ』開幕!
前妻オードリーを演じるのは紅ゆずる、ネヴィルからの愛に戸惑いと愁いを抱く姿を繊細に演じる。ネヴィルの現在の妻ケイは鳳翔大で、華やかな若い妻の自信と裏腹の不安を表情豊かに見せる。マラヤから帰国したばかりのロイド役は一色洋平が演じ、柔らかで控えめな物腰の中に青年貴族の存在感を示している。
彼らを取り巻く人々も多彩で、ケイのボーイフレンドで、プレイボーイ風だが意外と誠実さもあるテッドを水石亜飛夢がスマートに演じれば、この家の家事を仕切る若い女性メアリー役の岡部麟は、自分の人生をどこか諦めている切なさを漂わせる。邸の持ち主、レディー・トレシリアン役の旺なつきは、登場シーンから貴族の誇りと気位の高さで場を圧倒、短い登場シーンで強烈な印象を残す。元弁護士トリーヴズ役の中尾隆聖は、邸に集まった人々を冷静に眺める目線と鋭い頭脳で、さりげなく物語を牽引する。
そして事件の捜査にあたるバトル警視とリーチ警部は、細見大輔と大髙雄一郎が演じ、経験豊富な叔父と若さの甥というコンビネーションの面白さで、この推理劇のアクセントとなり、終盤のスリリングな展開では大きな役割を果たす。一幕で仕掛けられた人間関係の罠が、レディー・トレシリアンの死で表面化し、浮かび上がったある犯人像。