2012年3月8日 14:55
「ハートを鷲づかみにされた」S・スピルバーグ監督が語る『戦火の馬』
という。
しかし、本作を映画化するにはとても高い障害を越えなければならなかった。それは“馬”だ。舞台版では複数のパフォーマーが精巧な巨大パペットを動かして馬を表現したが、映画版では本物の馬が演技をする。しかし、監督が「彼らは脚本に興味がないし、一緒に散歩に出かけて心を通わせれば、仕事がスムーズに行くというわけでもない」と笑うとおり、馬は人間の要求を完全に聞き入れてはくれない。「馬が現場でじっとしていてくれることを望むんだけど、いつでも従ってくれるわけではない。でも、気分が乗ると、馬たちは圧倒的な存在感を発揮するばかりか、脚本にはなかった細かなニュアンスを付け加えてくれる。この映画ではCGで作った馬は3ショットしか登場していない。
映画に登場する98パーセントの馬は本物だよ。CGで処理したのも、馬を怪我させるリスクがあった場面だけだ」。
スピルバーグ監督は、物語を描く方法を知り尽くした才人だ。彼が他の監督と比較して驚異的なまでに早く撮影を終えるのも、頭の中に明確なイメージがあるからだろう。しかし、本作では監督のイメージどおりには決して動かない、と同時に監督のイメージ以上の演技を見せる“馬”が出演したことで、これまでのスピルバーグ作品にはなかった演技やドラマ、そして人間と馬の絆が生まれる瞬間が描かれている。
『戦火の馬』
公開中
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