傍若無人な行為に走るふたりの日常が描かれる。ただ、その表現手法はよく言えばジャンル・ミックス、悪く言えばもうはちゃめちゃ。近年の映画でいえばデヴィッド・フィンチャー監督の『パニック・ルーム』を思わせるような室外から室内へと導くオープニングのショットからはじまり、あるシーンは女性の足先を執拗に追った官能ロマン、あるシーンは女の子のかわいさをきっちりとらえた当時、流行していたアイドル映画、あるシーンは身も凍るようなホラー、あるシーンは1発勝負のドキュメンタリーと、映画のカラーがこちらも驚くくらいころころと変わっていく。それはある意味、バラバラでまとまりがない。
でも、一方で混然一体となってこちらに向かってくるようなパワーも不思議と宿る。そのパワーの源は、何かといえば、矢口ワールドの真骨頂といっていい“エンターテイメント性”にほかならない。巻き込まれた素人ははた迷惑だったと思わずにいられない過激なアプローチで撮られたドキュメンタリー映像、今だったら許されないかもしれない炎上シーン、四谷怪談を想起させるおどろおどろしさが漂うホラーの場面など、いずれの映像も驚きや面白さが溢れ、一喜一憂させられる。