4つの物語で織りなす大人のドラマ、『往転-オウテン』が開幕
男性キャラも個性豊かだ。妻でない女への想いに揺れる、腰痛持ちの50男(大石継太)。兄の婚約者と元カノを前に、これまた揺れる、桃農園主(尾上寛之)。それぞれの事情と秘密を隠し持つ男たち(仗桐安、浅利陽介)もまた独特の吸引力。そして舞台上で回されるハンディカメラとその映像が、虚構とリアルの境界線をより際立たせる。
誰もが、何らかの旅の途中である。そしてどの旅もひとりで進むしかなく、いずれは必ず終わりを迎える。むしろ人生は「旅が終わってから」の方がずっと長いのだ。
……というようなことを、桑原は声高に示さず、ただ、匂わせる。それが青木の緻密な演出と相まって、通奏低音のように、観客の胸に苦く残る。右往左往、七転八倒しながら、それぞれの登場人物が踏み出す大小の一歩。哀しくも切実な大人向けのエールだ。
公演は11月20日(日)まで。チケット発売中。
取材・文:小川志津子
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