世界的指揮者と米国人少佐の息詰まる攻防戦を行定勲の演出で舞台化
何が正しいか正しくないのか、正しいと思って見ていることが、違う人から見たら別のものに見えるんじゃないか。アーノルド少佐を通してそういった微妙なところをお客さんに伝えられたら、演劇でやる意味があるのかなと思います」と語る。
プライドをもって仕事に取り組み、時に冷酷ともいえる非情さでフルトヴェングラーの私生活まで暴いてゆくアーノルド。対するフルトヴェングラーにも、彼が世話をしたピアニストの未亡人でユダヤ人のタマーラ(小島聖)という存在が現れる。独裁者のもと、音楽家たちが生き延びるために払った苦難の数々が、次第に明らかになってゆく。
平は「実際のフルトヴェングラーもシャイで、内省的な面があったそうです。伝説の指揮者といってもさまざまな顔がある。そこにいるだけでいかに彼の人となりを出せるか、稽古では苦しんで作っていきたいですね」と話す。
平との初共演にやや緊張気味の筧については、「舞台から飛び出してきそうな迫力がある。僕も頭から食われないようにしなければ」と笑顔。また演出の行定について筧に聞くと、「一緒に仕事が出来て光栄です。舞台は映画の“引き”で撮る“長回し”と同じなので、あとは役者が芝居で“ズームアップ”の効果を見せなくちゃいけない」