エリザベートを演じるのは、本公演で退団するトップ娘役、蘭乃はな。可憐でおてんばな少女時代から年老いていくまで、エリザベートが心身ともに変化していく様を丁寧に表現している。自由に生きたいと願っていた少女時代。フランツ・ヨーゼフに見初められて宮廷へ嫁いだエリザベートを待っていたのは、皇太后ゾフィーによる厳しい教育だった。フランツの支えも得られず、孤独に苦しみながらも強い決意を示すエリザベート。その精神的な脆さと強さを情感豊かに演じる蘭乃に、集大成らしい姿を見た。
また、エリザベート暗殺犯で狂言回し的存在のルイジ・ルキーニを演じるのは望海風斗(のぞみ・ふうと)。狂気に満ちた表情や口調、歌唱力の高さで魅せ、テンポ良く物語を運んでいく。
フランツは専科・北翔海莉(ほくしょう・かいり)が演じ、大きく重厚な存在感でフレッシュな新生花組の空気を締める。皇太子ルドルフは役替わりで、この日演じたのは芹香斗亜(せりか・とあ)。儚さをまとった佇まいで、純粋で真っ直ぐなルドルフを表現している。
初日には上演回数800回を迎えた本作。明日海をはじめとするフレッシュな面々により、新たな『エリザベート』が生み出された。