アイーダは悲哀に満ちた高貴で可憐なキャラクターとして表現されることが多々ある中、チェドリンスは、祖国エチオピアと現在の自分の立場への悔しさと苛立ちがにじみ出る激しいアイーダ像を描く。ラダメス、アムネリスとの三角関係もより劇的で、その火花が客席にも飛んできそうだ。アイーダの最初の聴きどころ「勝ちて帰れ」では、祖国を思う気持ちとラダメスへの恋心の間で揺れる苦悩を、チェドリンスは激烈なまでにドラマティックに歌い、それでいて、後半の神へ祈る歌では深い情感を聴かせる。1曲で圧倒的なドラマを描き出したチェドリンスの調子は上々のようで、本公演では聴衆の心をわしづかみにすることだろう。
フランチェスコ・ローザが指揮するマリボール国立歌劇場管弦楽団は歌心に満ちた演奏で、テンポのメリハリを効果的に作ってオペラ全体を牽引する。また、合唱団は特に男声の低音の豊かな響きが魅力的。そのほかの歌手も粒ぞろいで、イタリア・オペラの魅力を余すところなく伝えてくれるだろう。
◆スロヴェニア・マリボール国立歌劇場「アイーダ」
・マリア・グレギーナ出演
10/19(日) 15:00開演
10/22(水) 18:30開演
・フィオレンツァ・チェドリンス出演
10/23(木)