くらし情報『古典を生き生きと!錦織健のモーツァルト・オペラ』

2015年2月20日 21:18

古典を生き生きと!錦織健のモーツァルト・オペラ

吉本新喜劇に実際に足を運んでコメディの研究しているという錦織とベテラン志村の呼吸感には、オペラ歌手としての極意を感じる。「芸術的に価値のある古典を、生き生きと鮮烈に新しく演じる」という使命感。型崩れさせることなく、面白くする、これはいつ何時でも美しく保たれる錦織健の歌唱法にも通じている。

恋人コンスタンツェを演じる佐藤美枝子は正統派中の正統派ソプラノ。超難役として有名なドニゼッティのオペラ「ランメルモールのルチア」のルチア役を完璧に歌える佐藤美枝子だからこそ、今回のコンスタンツェ役での超絶技巧も光っていた。コケティッシュなブロンデ役の市原愛、愉快な召使ペドリロ役の高柳圭も大活躍し、台詞のみで歌わないトルコ太守の役にバス・バリトンの池田直樹が配役されるという豪華さも見逃せない。

そして、太守の寛大さによって平和がもたらされるというエンディングには、戦いなき公平な世界を目指す芸術家の理想が託されている。困難な社会情勢の中、「タイムリーに」イスラム教の寛容さが描かれているのは偶然なのだが、この作品の上演が今行われることは、とても大きな意味をもつはずだ。
◆錦織健プロデュース・オペラ vol.6 モーツァルト「後宮からの逃走」

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