とにかく面白い芝居になって、来てくれはったお客さんが喜んで帰ってくれたら」と語っている。ただ喜んでもらいたいという藤山のその姿勢はまさに本物。渡辺も、「自分がこうやってやろうではなく、この舞台の一郎としての役割を考えたい。直美さんのワカナを見て、一郎がどうあるべきかを見つけたいと思います」と、作品を第一に思う。
この舞台で描かれるのは、天才と賞された芸人の裏側。渡辺はそこにこそ、この作品の魅力を感じている。「ただの面白楽しいアチャラカものではなく、バックステージの人間ドラマが描かれている。一郎も自分に才能がないのをわかりながらも、愛ゆえに、天才のワカナに必死でついていった。
その哀しさ、演じがいがあるなと思います」。そして、ワカナの人生にも惹かれずにはいられない。「誰を蹴落としてでもテッペンを取りたいというバイタリティーには憧れます。その代償として若くして亡くなることにはなるんですけど。でも、何があっても上を向いて生きていく、誰にもおもねらず自分の道をいく、そんなワカナの力強い姿は観ていただく価値があると思いますね」。観れば生きる力が湧いてくる。そんな舞台になりそうだ。
公演は5月29日(金)