だがクライマックスに近づくとムードは一転。真剣な岡田とひょうひょうとした表情の勝村、ふたりのバランスのズレが不思議に胸をざわつかせる。少し前まで笑いの響いた稽古場が、しんと静まり、得体の知れない戦慄が忍び寄る。終始、頷きながらみつめていたハーフォードの「Well done!」で緊張が解けた。談笑しながらの演出チェックの後に休憩に入るや、岡田と勝村は再びリフティング合戦を開始。その喜々としたやんちゃな素振りと直前の緊張感とのギャップに、頬が緩む。ふたりの俳優と演出家が、それぞれの能力に敬意を払い、心から信頼して実直に作業を積んでいる様子が好印象だった。「こんな穏やかな稽古場は僕、初めてです」と笑う勝村に話を聞いた。
「26年もこの作品を演出し続けているロビンさんは、名匠ですよね。静かに状況を説明するだけで、自然に彼の求める方向へと僕らを導いていく。また岡田くんは身体的なポテンシャルが高く、身体をうまく使って声を出すことができる。恥ずかしがりやで、それを隠すことなくそのまま提出できる強さがある人です。過剰な演技を選択せず、自分の役と演出家のリクエストに対して、非常にシンプルに奉仕している。