男女入替劇の美しさと驚き……舞台「夜の姉妹」華麗に開幕
はしゃぐ女子学生たちにピッ!と鋭く笛を吹き鳴らし、静止させるやり取りはとてつもなく愉快だ。
マルガレーテ王妃役の八代進一とアンナ・エグロシュタイン男爵夫人役の粟根まことが優雅で麗しい淑女を演じ、山本は機知に富む美人女流作家をカッコよく熱演!ローザ役の平野は、身重なのに愛するラインハルトことタカラジェンヌの彩乃を抱きかかえ熱烈なキッス……と、すかさず彩乃が「おっと、逆だよ」と粋に凛々しく、抱え直す。なんて倒錯的。
一方で男爵夫人の館で働く、女中のハンナを演じる近江谷太朗はなぜか、時折アリを食べ(開場前の諸注意に注目!)慈愛に満ちた眼差しで、菊地美香演じる強がりで孤独な子ども、ビルトを見つめる。ふたりのつむぐ関係は、おそらくこの物語の救いだ。中野咲希の役についてはあえて伏せたい。しかし、その登場は見る者の心を掻き立てるだろう。
「どんな子どもにも誇りはあるわ……」とハンナ。
「あなたって、正しいわ」とヨゼファ。
やがて、酒場で酔いどれていたアナベルは「人は本性と反対の仮面を好むものよ」という踊り子の言葉に、真実を見い出す。明かされた結末とうらはらにカーテンコールは圧巻だ。役者たちの誇らしく輝きに満ちた笑顔に魔法が解かれたようで、泣けた。