「一見共感しづらい作品に思えるけれど、脚本を読み進めると、決して近親相姦という部分がメインというわけではないことが見えてくる。兄妹間の純愛が軸にありつつも、そこから周りの憎悪やエゴが浮き彫りになってくる愛憎劇なんです」と浦井が一転真面目に話すと、蒼井は「浦井さんの言うとおりだと思います。だからこそ私たち兄妹はつっぱしらないといけない。それは自分たちの恋愛を表現するのではなく、作品がもつものを浮かび上がらせるために。そんなふうに今は思います」と続けた。
演出を手掛けるのは栗山民也。浦井は『デスノート The Musical』で栗山演出を経験している。「栗山さんは、現場と作品に愛を持って挑まれる方だから安心感があります。
栗山さんがもつ揺るがないビジョンに対して、自分が何を出せるか、つねに挑戦です」と決意を新たにする浦井。一方の蒼井は栗山にストレートプレイの演出を受けることが、かねてからの念願だったという。「一度だけ、宮沢賢治さんの作品の朗読劇でご一緒したことがあったんです。そのとき、事前の下調べの深さ、読解力のすごさに驚かされました。いつかこの人の演出を受けたいという願いが思いのほか早くかなってうれしいんです。