東京フィルの艶やかな音や、コローの絵画のような色彩、若々しい歌手たちの見た目もあいまって、終始うっとりさせられた。
そんななか、苦悩するごとに増していくウェルテルの輝きは、第3幕で頂点に達する。「愛だけが真実なんだ。それ以外は無意味だ!」――3幕分、抑えに抑えてきた感情が爆発。ふたりが口づけしたときの快感と言ったらなかった。この日一番の歓声が上がったし、ウェルテルの歌声と、まっすぐな感情の美しさに涙がボロボロあふれた。
ウェルテルは破滅型で、ヒーローとはかけ離れた人物に見える。しかし、彼の死の後味は決して悪くない。
ある意味、マスネのもうひとつの代表作『マノン』のヒロインにも似ている。悩める青年と小悪魔女子は正反対にも見えるが、自分をごまかさないという一点においてとてもよく似ていて、私にはどちらもすがすがしい。カーテンコールで喝采に応えるコルチャックには気のいいナイスガイの雰囲気があふれていて、そんな歌手本来の朗らかさも功を奏したのかもしれない。
また、マノンに振り回される騎士デ・グリューがいい男であるように、シャーロットもいい女だと思う。ズボン役もこなすメッゾソプラノだけあって、どこか凛々しく毅然とした態度がカッコいいマクシモアなら、悲しみを乗り越えて強く生きていくだろう。そんな気がした。
公演は4月16日(土)まで。
取材・文:高野麻衣