演劇的な魅力あふれる『コインロッカー・ベイビーズ』
舞台『コインロッカー・ベイビーズ』稽古場より撮影:阿部章仁
1980年に発表された村上龍の小説『コインロッカー・ベイビーズ』が音楽劇になる。コインロッカーに捨てられ、親からも社会からも見放されたふたりの若者を描いて、今なお衝撃を与え続けているこの傑作は、舞台化によって何を伝えてくれるのか。音楽劇だからこそ届くものを、白熱の稽古場に探った。
舞台『コインロッカー・ベイビーズ』チケット情報
稽古場に入ると、いくつかの四角い穴が二段に積み上げられたセットがあった。のちにそれが、車になったりビルになったりするのがわかるのだが、一見すると、まさにコインロッカーであり、オープニングの場面では、まさしくそこから、この物語の主人公であるふたりの少年、ハシとキクが生まれ出る。演じるのは、A.B.C-Zの橋本良亮と河合郁人だ。ハードなロック音楽に乗せて、シルビア・グラブ、ROLLY、そして梅棒の梅澤祐介などを揃えたアンサンブルが、捨てられた赤ん坊の歌を激しく歌い踊るなか、登場するふたり。世の中のすべてを憎むかのような鋭い目が、いきなり突き刺さる。
ふたりを囲むダンスも、上げる手の角度や目線など、細かく動きを調整していくことで、その意味するところが鮮明になっていく。