志の輔の落語の世界が立ち現れるノンストップコメディ
また、この世界の住人たちの個性の強いこと!源造は喜怒哀楽が激しすぎるし、YOUが演じるその妻は妄想がすぎるし、ふたりが合わされば、抜群のコンビネーションで見せる夫婦漫才が始まる。これに魚屋に扮する勝村政信が加わると、トリオ漫才かコントである。手にしたお盆を放って中井に抱きついたり、何ごとにも大げさな男を勝村は全身で表現する。明星真由美が演じる魚屋の妻とはマイムを使い、ふたりならではの演劇的なシーンになっていく。体面を繕おうとするあまりにおかしくなっていく前・商店街会長と、あまりにも渋すぎるひな人形の職人を演じるのは阿南健治だ。2役ともまったく別の方向からおかしみを醸し出す。そして、音尾琢真演じる神経質そうな役人、サヘル・ローズ扮する通訳、ほかの商店街の人々が、トラブルがありながらも、フランス特使の奥様とお嬢様に喜んでもらいたいと必死になっていく。全員が全員おバカだけれども気持ちのいい人たち。
まさしくそれは、“志の輔らくご”の世界である。
原作は『踊るファックス』『ディアファミリー』『ガラガラ』『メルシーひな祭り』の4本の落語。脚本・演出のG2がそれらをひとつにし、役者陣とともに上質なノンストップコメディに仕上げている。