黒羽は、鬼と呼ばれる井伊直政と、友情に生きる大谷吉継のコントラストでそれぞれの役を引き立たせる。そして、染谷が演じる三成と家康がグッと空気を引き締めていた。青竹チームは、猪塚の熱演も印象的。家康の「がじゅり、がじゅり」と爪を噛む音だけで舞台上の空気を不穏に変え、圧倒的な恐ろしさを見せつける。矢部は、今回最年少の18歳という若さながら重みのある直政と吉継という役をのびのびと演じていた。小早川役の西川がスイッチのようにパチパチとモブ役を入れ替えていく様も面白い。
そして、伊達政宗とその家臣・小十郎の過ごした長い年月を軸に戦国時代を描く『俺とおまえの夏の陣』を演じるのは、須賀健太、染谷俊之、黒羽麻璃央、猪塚健太。『夏の陣』チームはこの日が初稽古だったが、テンポが合うスピードも早く、ひとつ合わさるたびに魅力を増していく様子は観ていて驚いた。
幼い梵天丸(政宗/須賀)の願いを命懸けで叶える小十郎(染谷)のシーンでは、互いの複雑に入り混じった感情、決意までしっかりと伝わるのがさすが。猪塚はかわいらしい政宗の弟と、政宗を毒殺しようとした母親を同時に演じるという難しいことをしていたが、魅力的に演じ分けていた。