という『ラ・カンパネラ』、「とくに有名な3番は起承転結があり、きれいな二重奏になったりリストらしい技巧もあったりと、よくできていると実感する」という『愛の夢』3曲を演奏する。
そして、外山が今回初めて取り上げるのが、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第17番『テンペスト』だ。「昔はベートーヴェンに苦手意識を持っていましたが、大人になって感じるのは、楽器が変わっていく時代に、音楽の素晴らしさを誰よりも伝え、ロマン派に渡した作曲家だということ。彼のソナタは年に1回でも本番に出し、死ぬまでに全曲を演奏したいと考えています。なかでも『テンペスト』は音楽の美しさが素朴に実直に表れた作品で、僕自身の音楽への思いとも重なります」
リストのバラード第2番とベートーヴェンの『テンペスト』をともに「つかみどころがないようで、芯が通っている」とする外山。テンペストとは「嵐」の意だが、バラードにも「嵐のように」と指示のついた箇所があり、共通するものを感じるという。作曲家達が若いころとは違う魅力を楽譜に注ぎ始めた時期のこれらの曲が、32歳の外山の手でどのような演奏となるか、必聴だ。
インタビュー中、ほかの演奏家の名前を次々に上げ、目を輝かせながらその素晴らしさや感動を説いた外山。