くらし情報『永作博美ら女の群像劇『頭痛肩こり樋口一葉』開幕』

永作博美ら女の群像劇『頭痛肩こり樋口一葉』開幕

と話したが、本当に観ているだけで元気が出てくる賑やかさで楽しい。

しかし、三田演じる一葉の母は明るく社交的だが「世が世であれば」「まさかこんな時代になるとは」という言葉を度々口にし、過ぎ去った時代への無意識な執着が、娘の恋を妨げ、借金を増やしてしまう。熊谷演じる小学校の先生も、愛華演じる“世が世ならお姫様”も、夫により身分を落とすが、そこに抵抗する術がない。そんな時代の話なのだ。

永作演じる一葉も、戸主として、貧しさに苦しみ、恋を捨て、家族のために七転八倒している。盆にその愚痴を話す様には愛らしさがあり、話を聞く女性たちも明るく受け流す。だが、ふと一葉が舞台上に一人になると、そのたびに突然ポカッと暗闇が開いたように世の中への憤りや絶望が見えるのだ。その暗闇がこの作品をただの楽しい作品にはせず、“それでもたくましく生きる美しさ”を感じさせてくれる。


深谷のみせるラストシーンは本当に美しく、もともとは井上ひさしが「女性が活躍する時代のために」と書き下ろした戯曲だそうだが、今の時代、すべての人に届く作品だと感じた。8月25日(木)まで東京・シアタークリエにて。9月に兵庫、新潟、宮城、山形、滋賀、長崎、愛知で上演。

取材・文:中川實穗
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