今思えば、1回目と2回目はエンジニアと同じ赤いジャケットを着て格好をつけすぎていたんじゃないかと。3回目は、何回も楽曲を歌い本当に汗べちょべちょになりました(笑)」。晴れて合格し、その後、初めてベトナムを訪れた。「歩いているだけで汗がドバーッと噴き出す暑さ。土地の匂い、空気感、そこに生きている男を演じなければ。いかに自分は浅はかだったかと気付かされました」
しかし、2014年は初演から一貫してエンジニアを演じてきた市村が闘病のため降板。駒田やほかのキャストが市村の分まで役を担った。「市村さんから『頼むな』と言われて。
無我夢中で、そのころの記憶がないんです。どうやって俳優・駒田一が生き延びるかということしか考えていなかった(笑)」というが、見事にワイルドで泥臭いエンジニアを演じきった。「今年はもっと地に足をつけて、彼が何を考え言葉を発しているのか深く掘り下げたい」
エンジニアがアメリカへの憧れを歌う「アメリカン・ドリーム」は名曲だ。「切なさを含め彼自身が表れている。夢は持つべきだと思うし、持った以上は闘わないと。僕の夢?そりゃ一生、いい芝居して、舞台に立ち続けることですよ」。今年は、2015年度 第41回菊田一夫演劇賞を受賞した。