くらし情報『観ると再び観たくなる問題作『Take me out』開幕』

観ると再び観たくなる問題作『Take me out』開幕

どこに座るかで観える人の表情、景色が変わり、何度も観たくなる構造だ。また、キャスト陣があまり捌けずに芝居が進んでいくのも特徴のひとつ。舞台上で着替えたりシャワーを浴びたり、ときには客席付近にキャストが座っていたり。真ん中で起きている出来事の間にも、それぞれの時間が流れていることを感じさせられる。

そんな濃密な空間の中で、メジャーリーグのロッカールーム、シャワールーム、グラウンドを舞台に、人種、信仰、格差、同性愛、差別などを生々しく描く本作。日本では人種や信仰の問題に直面する機会も少ないが、それでもどこか彼らが発する感情に思い当たる節があり、自らの“正義”や“信念”がグラグラと揺さぶられるような感覚に襲われる。それぞれが持つ偏見、理解、正義、善意、悪意…どれも単純なものではない。さまざまな要因が何重にも重なった結果であることが物語の中でわかるため、感想も大きく分かれるだろう。


観劇後は、誰かと感想を語り合いたくなったり、次は逆サイドの席で観劇したくなったりするような作品。ぜひ劇場に足を運んで体感してほしい。公演は12月21日(水)まで東京・DDD AOYAMA CROSS THEATER、12月23(金・祝)、24日(土)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールにて。

取材・文:中川實穗
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