「『いま出せる、あなたの音楽をやりなさい』と言ってくれて、思わず即興を演ってしまいました」と桑原は笑う。クインシーは演奏を終えた桑原にハグをして、何を悩んでいるのか聞いてくれた。憑き物が落ちたようにふっきれた桑原が、帰りの飛行機の中で一気に書き上げたのが、名曲『The Back(背中)』だ。
「帰って行くクインシーの広い背中を見ていたら、大切なものが見えなくなっていた自分が恥ずかしくなりました。私はもっと音楽に、貪欲になっていいんだなって」と桑原はかみしめるように語る。次のフェーズに踏み出した彼女の、新たな魅力が詰まった『5 Souls』。彼女の“今”を、ピットインという密な空間でたっぷりと味わいたい。
取材・文佐藤さくら