リストは“生命力”。人間、音楽家として、周囲に多くの光を与えた人です。彼が自らのルーツをたどったハンガリー狂詩曲には、音楽的な濃さと生命力を特に感じます」
そして、ライフワークとして取り組んでいるというバッハ。
「作曲家たちにとっての原点であり、聖書といえる存在です。聖書にはメッセージが込められ、何かを気づかせてくれますが、その意味で、バッハはとても“新しい”存在だと思うのです。今年5月に初めてゴルドベルク変奏曲をステージで演奏し、作品の深さを改めて実感しました。今回は、プログラム中、間奏曲風にいくつかの変奏を弾きます。これによって、バッハのすばらしさ、モダンさをより感じていただけるのではないでしょうか」
曲順にもかなりのこだわりがある。
特に後半のバッハ以降は、「ト長調とト短調の作品を集め、異なる作曲家の作品でありながら一つの組曲のように」感じられる構成とした。
「自分でも、実際にこの流れで演奏することでどんな発見があるのか楽しみ。新しい挑戦です」
昨年デビュー30周年という節目を迎え、今、「音づくりには永遠にゴールがないことが歓び」だと語る。
「年を重ねることによる技術の衰えは避けられないという方もいますが、私はそうは思いません。