ヒロインに加藤梨里香。思春期の葛藤を描く“いのち”のミュージカル
最大の目玉は、今作よりの出演となる歌舞伎俳優の中村鴈治郎である。鴈治郎が演じるマシューは、陽気な日系ハワイ人で、かつてラスベガスでショーのプロデューサーを務めていたという人物。父親を早くに失くしたマリア親子を公私共に支えるマシューを、おおらかな包容力で演じていた。座組全体の活力を体現するような力強い歌声と演技は圧巻のひと言。こちらもミュージカル初挑戦とは到底思えないパフォーマンスを披露していた。
物語のテーマとしては、とても分かりやすく「命のあり方」や「人を思う気持ち」がとても丁寧に描かれている。単純なテーマこそ見えにくくなってしまうのが常だが、本作では狭き門をオーディションで勝ち抜いたジュニアキャストが素晴らしい才能を披露し、作品の一部として、「子役」ではなく“プリンシパル”をしっかりと演じているからこそ明確に見えてくる。
鴈治郎と山田の“新たなる挑戦”と、子ども達が体現する無限の可能性。
加藤や小野田、吉川らのハイレベルなパフォーマンスに包まれ、確かな実力を持ったキャストが結集し、良質なエンタメとしてはもちろんだが、夏休み最後の思い出として、是非とも家族揃っての観劇をお奨めしたい。