と公言し、出会った瞬間より「(自分はこの曲に対し)特別な使命感があるのだと直感した」と断言するのが、オリヴィエ・メシアン作曲による大作ピアノ曲「幼子イエスにそそぐ20のまなざし」だ。エマールを育て上げたといっても過言ではない恩師、イヴォンヌ・ロリオ(メシアン夫人)から受け継いだレパートリーであり、作曲家からもその奥義を学んだという作品だが、演奏には強じんな精神力などを要するだけに、エマールも「(全曲は)年に2~3回程度しか演奏しない」という。
全20曲、トータル演奏時間が約2時間というこの曲は、敬虔なキリスト教(カトリック)の信者でもあったメシアンの信仰告白。さらには、音が色彩的に見えるという共感覚の持ち主だったと伝えられるだけに、幻惑的なその音楽からはさまざまな音が、虹のように空間へと放射していくようにも感じられるだろう。
めったにこの曲を演奏しないというエマールだが、天井が高く、大聖堂を思わせる東京オペラシティ コンサートホールだからこそ!と、日本では初めての全曲演奏に挑むこととなった。12月6日(水)は、音楽、空間(音響)、そしてこのホールに集まる聴衆が三位一体と成り、都会の夜に孤高の時間を楽しむという特別なコンサートになるだろう。