大野和士(c)Rikimaru Hotta
都響の新シーズンは、音楽監督・大野和士によるマーラーの大作「交響曲第3番」で幕を開ける。2016年11月にマーラー第4交響曲を手掛けた大野が、本公演で第3交響曲を取り上げるのは自然の流れだ。声楽作品を得意とする大野が都響のマーラー演奏の新境地を拓く、象徴的な演奏となるだろう。大野和士に本作品の聴きどころを聞いた。
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交響曲第1番、第2番での人間の生死の葛藤に続く作品として、交響曲第3番はそれらの苦悩を内包するかのように自然賛歌をテーマとした作品として知られている。
「マーラーは、交響曲の中にすべてを書き尽くさなければならないと言っています。交響曲のなかにミクロコスモス、宇宙があります」と語る大野。弟子の指揮者ワルターがシュタインバッハのマーラーを訪れた際に、「君はもうこの風景を見る必要はない。
あれは全て曲にしてしまったから」と語ったという逸話があるが、大野はこのマーラーの言葉に複雑なメッセージが込められていると感じるという。
「この作品の作曲当時から、マーラーは先の時代を予感していました。第4楽章では、ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』から、『この世の痛みは深い』という一節を用いています。