鄭義信が描く死刑執行を前にしたBC級戦犯たちの生への叫び
、戦時中は大尉として朝鮮出身の軍属たちをしごき、戦後は一転、彼らと同じ獄に繋がれることになった山形(浅野雅博)、その山形らの命令で捕虜を使役したことで戦犯となった春吉(チュンギル/丸山厚人)など、異なる出自や立場の者たちが死を前に同じ刑務所で生活している。
静かに死を待つ者、諦めに似た境地でおどける者、絶望する者、自分は助かるはずだと信じる者、死を前になお復讐を企てる者など、彼らの心情は様々…いや、ひとりの人間の心情さえもコロコロと変わっていくし、それぞれの関係性も憎み合ったかと思えば、死という共通の未来を前に共感や同情、赦しを抱くようになるなど、目まぐるしく変化していく。
そして、舞台上で登場人物たち以上に強い存在感を放っているのが、絞首刑の台である。「笑わせたい。こんな状況だからって暗く演じる必要はない」という鄭の言葉通り、池内演じる南星を中心に、日々の営みの中に笑いやユーモアが散りばめられながら物語は展開するが、一方で、どんな時も死刑台は常に“神”のごとく彼らを見下ろし、死がいつ訪れてもおかしくないのだと知らしめる。タイトルにある「マクベス」は役者を志していた南星が常に持ち歩いている古い文庫の戯曲。