衰えることを知らぬ舞台での華に加え、推進力のあるリーダーシップも発揮し、ふたつの来日公演ではふたりのプリンシパルも誕生した。オレリーによってエトワールに指名されたユーゴ・マルシャンと、タマラによってプリンシパルに昇格したセザール・コラレスの輝かしい表情は、日本の観客にとって忘れえぬものになったのだ。ふたりの芸術監督が日本の舞台と観客を大切に思っている証のような出来事だった。
ダンサーとしてはますます自由な境地を切り開いているオレリーが世界バレエフェスティバルで踊るのは、ノルウェーを拠点に活躍する振付家アラン・ルシアン・オイエンによるデュエット作品『・・・アンド・キャロライン』。映画『アメリカン・ビューティ』に想を得て振り付けられたという、現代社会の闇を描いた作品だ。タマラは自らのカンパニーのプリンシパルであるイサック・フェルナンデスとアロンソ振付の『カルメン』とハンス・ファン・マーネン振付の『HETのための2つの小品』を踊る。タマラとイサックはバレエフェス創始者の佐々木忠次氏の追悼公演〈Sasaki Gala〉では『ドン・キホーテ』(プティパ振付)も披露する。パリ・オペラ座と英国ロイヤル・バレエ団のふたつの名花を、長年にわたって見ることが出来る日本の観客は幸運としか言いようがない。