プログラムも実に興味深い。1908年作のラヴェルのバレエ音楽『マ・メール・ロワ』、1916年作のシマノフスキのヴァイオリン協奏曲第1番、1926年作のヤナーチェクの『シンフォニエッタ』と、20世紀初頭の名作が時系列で続く。コンセプトも明確だし、どれもラトルの才気とセンス、ロンドン響の精緻な機能性が生きる作品だ。
童話を題材にした『マ・メール・ロワ』は、精妙でフランスのエスプリに富んだ佳品。当コンビならば、この上なく緻密な演奏を聴かせるに違いない。『シンフォニエッタ』は以前、村上春樹の小説『1Q84』に登場して話題を集めた小交響曲。チェコの巨匠が描いた民族的な音楽で、トランペット9本をはじめ13本の金管別動隊を用いた壮麗なサウンドが聴きものだ。
そしてシマノフスキのヴァイオリン協奏曲は、ショパン以来のポーランドの大家が全盛期に残した、エキゾティックで妖艶な音楽。
ここでは、モデルのような長身と美貌を誇るオランダの人気奏者、ジャニーヌ・ヤンセンがソロを弾く。艶美な音色、高度のテクニック、繊細な感性を併せ持つ彼女は、官能的でいながら難技巧を要する同曲に相応しい名手だ。しかもこの曲は、多数の管・打楽器やハープ2本を用いた、協奏曲としては異例の大編成。