それに勝るとも劣らない見事な存在感を示したのが、女房ビアンカ役の、新国立劇場初登場のソプラノ齊藤純子。フランスを拠点にヨーロッパで活躍する彼女。これからもどんどん聴きたい人だ。
一方の《ジャンニ・スキッキ》は1918年初演。死んだ富豪の遺産を自分たちに有利に残そうと企む親戚たちが策士ジャンニ・スキッキに相談するが、逆に彼に全財産を騙し取られてしまうという喜劇。主役ジャンニ・スキッキには、こちらも世界のトップ・バリトン、カルロス・アルバレスが登場して、軽妙な役どころを鮮やかに(最後には日本語も駆使して!)楽しませた。演出(粟國淳)が面白い!物語はすべて、巨大な書斎机の上で進む。1950~60年代風のポップな衣裳の登場人物たちは全員小人のようで、巨大なペンやインク瓶、ビスケットや天秤ばかりの間を動き回って、なんとも賑やか。
子供が見ても楽しめそうだが、不倫殺人の物語とセットでは無理か?こっちも遺言状詐欺だし……。こちらは登場人物が総勢15人と多く、砂川涼子(ラウレッタ)、村上敏明(リヌッチョ)ら、アルバレス以外は日本人キャスト。超有名アリア〈私のお父さん〉から重唱の精緻なアンサンブルまで、屈託なく楽しんだ。