セバスティアン・ヴァイグレ (C)読響
5月14日、読売日本交響楽団の第588回定期演奏会(サントリーホール)は、今年4月に第10代常任指揮者に就任したセバスティアン・ヴァイグレの披露演奏会として行なわれた。
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令和とともに始まるオーケストラの新しい時代の幕開けを見届けようと集まった聴衆たちがかたずを飲んで見守るなか、ヴァイグレが登場すると、歓迎の意を示すように、ひときわ大きな拍手が湧き起こる。曲目は現代作曲家ハンス・ヴェルナー・ヘンツェの《7つのボレロ》とブルックナーの交響曲第9番という、がっつりドイツ音楽プログラム。そして音楽の振り幅の大きさを示す2曲だ。
前半のヘンツェはいきなり、打楽器を含むオーケストラの全奏が咆哮する。オーケストラを気持ちよく鳴らしきって、まずは挨拶代わりの切れ味を印象づけるヴァイグレ。一転、後半のブルックナーでは深い息づかいの歌を丁寧に引き出した。消え入るように全曲が終わったあともホール全体が動けない。
長い静寂の持続は、客席が指揮者と緊張感を共有していた証しだろう。その「魔法」が解けた瞬間に大きな喝采がホールを包んだ。感動的な船出だ。