初演から50年!松本白鸚が感謝と祈りを込めて歌い続ける
白鸚は「一番憎むべき狂気とは、あるがままの人生に、ただ折り合いをつけてしまって、あるべき姿のために戦わないことだ」というセルバンテスのセリフがこの作品のテーマだと語る。風車を巨人だと思い込み、娼婦のアルドンザを“憧れの姫”と敬う、狂人だと笑われるキホーテこそ、折り合いをつけず、あるべき姿のために真っすぐに戦っている真実だと気付かされていく。
2009年からサンチョを演じ「やるたびに身が引き締まる」という駒田一と白鸚のコンビは、ますます息もピッタリで笑いと涙を誘う。初参加の瀬奈じゅんは「50年の歴史を台無しにしないように、プレッシャーと緊張感でいっぱい」だと話すが、力強さの中に悲しみ、切なさを抱えたアルドンザを演じ切った。余命幾ばくもないキハーナをサンチョとアルドンザが抱きかかえるシーンは、荘厳として悲しく胸を打つ。劇中劇が終わり、セルバンテスは一歩一歩、裁判所への階段を登っていく。白鸚は「この作品は私の亡き父と、亡き菊田一夫さんのふたりの見果てぬ夢なんです。僕は、男ふたりの夢を『見果てぬ夢』という劇中歌でレクイエムとして、感謝と祈りとこれからへの思いを込めて歌い続けてきました」と話す。